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第28話
モーツァルトのように

天才と謳われた作曲家のモーツァルトが、
ずば抜けた記憶力を持っていたことは、よく知られています。
例えば作曲をするときなど、モーツァルトの頭の中では、
一曲まるごと、ほとんど瞬間的に思いつき、
後はその記憶通りに楽譜に記録していったそうです。
そして、一度思いついた曲を忘れることはなかったといいます。

ずいぶん昔、学生時代に読んだ本に書いてあった話なので、
私の記憶には多少不正確なところがあるかもしれませんが、
ともかく、モーツァルトが並みの人間でなかったことは確かなようです。

もう一つ、まったく別のお話になりますが、
達人と称されたある仏師、仏像を彫る職人さんが、
材料となる木を目の前にしたとき、
これから彫ろうとする仏様の姿がその中に見えていた、
と聞いたことがあります。
そして、材料の中から仏様を出してあげるような感覚で、
彫り進んでいったそうです。

さて、この二つの逸話には、
私たちが文章を書く際に参考になるヒントが含まれています。
それは、
「楽譜に記録する前に、モーツァルトの頭の中では作曲が完成していた」
「木を削り始める前に、仏師の頭の中では仏像の姿が完成していた」

という点です。
文章も、実際に書き始める前に、
頭の中で大筋を完成させておくことが理想の状態といえます。
そうすれば、文章全体にしっかりとした「一本の筋」を通すことができます。
いわば文章の背骨のようなものです。
この背骨を常に意識して書けば、
最終的に、「説得力のある文章」をつくりやすくなります。
なぜなら、論を展開する基準が常に頭の中にあるため、
書いている途中で矛盾が発生しにくくなるからです。

もちろん、書きながらインスピレーションが湧いてきて、
話が広がっていくこともあるでしょう。
その場合は、もう一度頭の中を整理して、全体の筋を組み立て直してください。
あるいは、書いているうちに、
最初に考えた筋の間違いや矛盾に気づくこともあります。
そのときは潔くあきらめて、一から考え直したほうがよいと思います。
無理にそのまま書き進めようとすると、袋小路に迷い込む可能性があります。

また、以前、「意外性」という味付けをすると文章が面白くなる、
といったことをこのメルマガで述べましたが、
意外な展開を考えるためには、やはり論の基準となる背骨が必要です。
その背骨に対して、あえてひねった内容を盛り込むことによって、
文章の面白みを増すことができるのです。

◆ヒント&ポイント◆
「書き始める前に、頭の中で文章全体の筋を組み立てておく」
「最初に話の背骨ができていれば、筋が通った説得力のある文章が書ける」

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