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徳永 未来さん

01回文平家物語
~落ち延びろ 滅びの地を~徳永 未来さん

「回文平家物語」~落ち延びろ 滅びの地を~

ジャンル:詩集  発行:2012年7月

回文平家物語
~落ち延びろ 滅びの地を~

2013年度第16回日本自費出版文化賞特別賞

上から読んでも下から読んでも同じという回文で『平家物語』を読み解いた作品。『古事記』『世界遺産』『彩時記』も同時収録。回文のおもしろさはもちろん、著者の視点から創造したユニークなコメントの数々など、物語を知っている人も知らない人も楽しめる一冊。

出来た時は、デザインも良くて感激はひとしおでしたね。
この本は絶対なにかやってくれる!って思ったんですよ。

Parade Books まずは受賞おめでとうございます!率直なお気持ちどうですか?
著者 「報われたなぁ~」って思いましたね。仙台の作並ってところで、回文大会が10年くらい前から毎年開かれてて。町おこしの一環としてね。私は1回目からの常連で、2回目に参加した時に最優秀賞をいただいたんですよ。それで「作品集として本として出してみたいな」と思ったのが、初めて自費出版した時のきっかけだったんですね。
Parade Books それがA社さんから出された本ですね。それから約10年で自費出版文化賞特別賞!
著者 特別賞(笑)苦節10年ってよく言いますね(笑)。いままで若干、自費出版というのが商業出版より軽く見られているというか、ちょっと引け目もあったんですけどね。これからは堂々と(笑)自己紹介したいと思います。
Parade Books 講評では「上から読んでも下から読んでも同じという回文。これで平家物語の内容やエピソードを創作した。10行に渡るものもあり、実にユニークな詩集といえる。」とのことでしたが、自分的にはどういった点が評価されたと思いますか?
著者 私、最初はどこのジャンルに応募をしようか迷ったんですよ。詩?エッセイ?短歌でも俳句でもないし…って。研究部門でもないしなぁ…と思って(笑)まぁ一番近いのがポエムなのかな?という感じで。だからね、なんて言うのだろう。言ってみれば、ちょっとキワモノ的じゃないですか?回文自体の認知度が低いってのもありますし。そういう作品は、審査する方も初めてだったと思うんですよね。
Parade Books 私たちも、正直そこまで身近ではなかったですね。
著者 そうでしょう?若い方ほどご存じではないみたいで。昔は小学校の国語の教科書に載っていたんですよ。有名なのが「しんぶんし」とか「たけやぶやけた」とか、多分みなさまはその辺の知識でとまっていらっしゃると思うんです。単語をひっくりかえすだけで笑いを誘うようなフレーズってあるんですけど、たとえば「マカオノオカマ」とかね(笑)ただ、一過性で笑いがとれるようなものもいいんですけど、私はもう少し肉付けして、一つのストーリー性というかバランスをもったものをつくりたいと思って。
Parade Books まさにパレードブックスでも「たけやぶやけた」とかだよね?と話してました(笑)
著者 「だんすがすんだ」まででしょう?(笑)ちょっと珍しいキワモノ的な分野だから受賞できたのかな?っていう。仮にこれが「回文短歌集」だったとしたら、短歌の部分では本職の方に負けると思うんですね。 でも「回文」というちょっとユニークなところが目を引いたのかな?とは思ってます。
Parade Books なるほど。でも人物に対するコメントに「(源義経は)母似のイケメンというわけではなかったようです。」とか、「徳永節」が入ってますよね(笑)平家物語にも源氏物語にも原作があるので、回文だけだと知らない方にはイメージ伝わらないこともあるじゃないですか?だから、純粋に読みものとしても面白いと思います。
著者 (笑)読んでくれた人の中には、回文には全然興味なくて「コメントだけでいいのに」って人もいてね。「なにそれ、失礼な」と(笑)
Parade Books (笑)でもそれくらい面白い。やはり文章も評価されたんだと思います。なにより回文の中のひとつひとつの言葉が美しい。やっぱり普段から読書や活字に親しまれているのですか?
著者 そうですね。わたしね、子供のころからね友達いなくて家の中で読書するのが大好きでね(笑)あと、祖父が俳人だったんですよ。とはいえ、祖父から手ほどきを受けたわけでもないんですけど。
Parade Books じゃあ血筋はあるのかもしれない。
著者 そんなことはないですけど、なんでもかんでも「きれいだね」「かわいいね」って言っていると「お前はなんて語彙が少ないんや!」と。「星がきれいなのと、花がきれいなのは違うやろ?なんでもそういうイージーな発言をするな」ということを小学生のころから言われていたんです。
Parade Books 回文の文字の大きさに大小があったり、1行開けたり2行開けたり…かなりこだわった印象ですが?
著者 う~ん、わりと感覚的ですね。あとは、回文は長くつくるのは結構易しいんですが、短くする方が難しいっていう気持ちがあって。だから主題的なものはグッと短く。そういうのはちょっと大きめな文字にしたいかな、って。あとは文字数の少ないものはちょっと貧相だから文字を大きく、というのもあります。
Parade Books ズバリ、自信作ってどれですか?
著者 今井四郎兼平のページの一番最後ですね。うん、これこれ。最後、自分が喉を掻き切って義仲のために死んでいったという。原文でもそこが一番好きだったんで。
Parade Books へ~、原作も読んでみたくなりました!次はデザインのお話に移りたいんですが、提案した時すごく気に入ってくださったじゃないですか?
著者 ええ、いつもセンスも良くて。なんかこちらの意図をくんでくれているんだな、嬉しいな、みたいな。表紙もすごく良くて選ぶのが難しかったですね。自分の会社で「どれがいい~?」って聞いてみたんですよ。もうダントツにこの決定案が人気でした。なんか扇子が舞い落ちるような…そんな感じが嬉しかったですね。 これも御社のデザイナーさんですか?
Parade Books そうなんです。パレードブックスもそこが自慢なので嬉しいです。すごく綺麗な本に出来上がった…って自負してます。
著者 なんか、感激もひとしおでしたね。いい色だし、デザインもいいし、この透けた雰囲気も素敵。その時、この本は絶対なにかやってくれる!って思ったんですよ。
Parade Books 徳永さんのイメージって、こういう少しきらびやかっていうか気品があるイメージなんですよね。
著者 ん~、そうでしょう?(笑)
Parade Books (笑)わざわざ言うこともなかったですね。
著者 いや、念押しでしょう?(笑)
Parade Books 徳永さんはA社やB社からも出版されてますよね。
著者 最初のA社では「協力出版」「共同出版」という言葉にまどわされて「あ、自費出版じゃないんだ」って喜んじゃって…バカでしょ?ホンマに(笑)しかも目が飛び出るような金額で…回文仲間で出版している人に聞いてみたら「あそこはダントツに高い」という話になりまして。
Parade Books そうだったんですね。出版社によって色々ですからね…。
著者 それで2作目はB社さんで出版しました。実は、その前に別の出版社にお願いしてたんですけど初校が全然上がってこなくて…、なんとその出版社が原稿を紛失してたんですよ!あの時はキレまくりました(笑)その後倒産しちゃったから、そこから出さなくて良かったかもしれない(笑)
Parade Books それは、まさかの体験でしたね!それから巡り巡ってどうやってパレードブックスを見つけられたんですか?
著者 mixiにバナー広告があったんじゃなかったかな?あと、口コミランキングみたいなところで一番上に御社が載っていたと思うんです。価格が安かったということもありますし、会社も近かったし、なんかあったらすぐ行けるかな?みたいな。担当者さんのお顔も知りたいなということで(笑)今では友達に「パレードブックスいいよ~」って推薦してます。
Parade Books わ~、嬉しい!!今回で4作目なワケですが、出版したことで新しくご縁が広がったようなことってありますか?
著者 さっき話した回文大会に、本を背負って毎回行くんですね。…まぁみなさん義理もあって買ってくださるんですけど、今はJR作並駅の構内に「回文源氏物語」と今作を20冊ぐらいずつ置かせていただいているんですよ。震災もあったので売上を全額寄付させていただくということで。その売上で、被災した小学校に文具とか買っていただいたみたいで。そこの小学生からお礼のお手紙をいただいたりとかはしたのですけど。
Parade Books 素晴らしいです。本のおかげでチャリティ活動ができたんですね。ところで、回文業界っていうのはどんな感じなんでしょう?
著者 どうでしょうね?私はお目にかかったこともないですが、回文会理事長って名乗ってる人はいらっしゃるようですけど(笑)
Parade Books 仲間内で批評会みたいなのとかあるんですか?
著者 朝日新聞のお笑いのコラムに回文を投稿していたんです。大体月に1回くらいのペースで仲間内の誰かの回文が掲載されてたりしたんです。でも、普段回文を創り慣れてない方が、ぽろっと作った方がインパクトがあって目を引く作品になる場合があるんですね。浦和レッズが優勝を決めた時「浦和で笑う(うらわでわらう)」っていう回文が載って仲間内では盛り上がりました。こねくりまわした我々にはかなわない作品が出来る。それがまた面白いなって思います。
Parade Books そもそも、回文ってどうやってつくってるんですか?
著者 例えば…これなんか(「いちがや」と書かれた箸袋を見て)さかさまから読んで「やがちい」とか。なんだろう「やがちい」って…?漢字に当てはめたら、弓矢の「矢」が「地位」を得るとか…つかえそうかな?みたいな。その時は別に役にたたなくても、普段からメモしていくんですよ。
Parade Books なるほど~。あらためて奥が深いですね。とはいえ、詩集とか俳句のジャンルって売れにくいジャンルじゃないですか?
著者 やっぱり売れにくいですね~。でも自分の本が初めて書店に並ぶとすっごく嬉しいじゃないですか?その麻薬みたいな喜びに抗えず、ダラダラと4作も出してしまいました。といっても楽あれば苦ありで、ハッキリ言って私の部屋は返品の山です(笑) 自分としても辛いワケですよ(笑)「なんでこんなことにお金をつぎ込んでいるんやろ」って(笑)私、本当に今回で最後にしようと思ったんです。だからすごく内容詰め込んでるでしょう?でも「もう最後やから」って思って(笑)
Parade Books そんなもったいない!次作は考えてないんですか?
著者 それが…考えてるんですよね…。賞をもらったら急に考えちゃったんですね(笑)
Parade Books よかった~(笑)ちなみにどういったものですか?
著者 回文戦国時代ですね。
Parade Books 面白そう!すごく楽しみです。最後に、パレードブックスで出版して良かったことがあったら聞かせてもらえますか?
著者 別の出版社の編集者が自費出版を下に見ていらっしゃる傾向があったんですね。「だまって言うことを聞いてりゃ間違いないから」みたいな上から目線で。でもパレードブックスさんは自費出版に対してすごく前向きだし、本当にこの仕事が好きなんだな~っていうのがメールからもお電話からもヒシヒシと伝わるというか。私のような素人をバカにもせず(笑)
Parade Books いやいや、だって大好きですから。徳永さんのファンでもありますよ。パレードブックスの雰囲気も気に入ってもらえて嬉しいです。
著者 私、今は勤務先が大阪なんですよ。大阪の本社にはお邪魔したことないのですが。
Parade Books ぜひぜひよかったら!東京支社の恵比寿もお気軽に。
著者 恵比寿…恵比寿というと、あのビールの?
Parade Books そうです。お酒は飲まれるんでしたっけ?
著者 もちろん。弱そうにみえます?(笑)
Parade Books (笑)いや、一応聞いておこうと思ったんです。では、いらした際にはぜひ恵比寿ビールを飲みにいきましょう。今日はありがとうございました。

徳永 未来(とくなが みき)
兵庫県出身。関西学院大学文学部卒業。大学生協書籍部、紀伊国屋書店、大阪府書店商業組合などの勤務を経て本と親しむ。阪神淡路大震災で避難生活を余儀なくされていた頃、親しくなった人を通じて回文に出会い、創作を始める。回文大会での最優秀賞受賞に加え、パレードブックスでは2作目となる「回文平家物語」が2013年度第16回日本自費出版文化賞 特別賞を受賞。

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