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中谷臣さん

17「世界史論述練習帳new」中谷臣さん

「世界史論述練習帳new」

ジャンル:参考書 発行:2009年11月

「世界史論述練習帳new」

東大、京大、一橋などの世界史論述の過去問と基本論述を扱った問題集。世界史論述の対策には一般の受験参考書のように関連する史実を勉強するだけではなく、思考力と論理的な文章力が必要になります。それを鍛えるための参考書が「世界史論述練習帳new」。本編から取り外せる別冊部分は、論述特有のテーマを知識として身につけるための「60字」問題集になっています。

出版によってどれだけ評価を得ることができたか、
自分はこの本を書くために生まれてきたと確信しています。

Parade Books 第5版が完売し、累計発行部数は2万9千部となりました。弊社のベストセラーの1つです。
著者 第1版を発行してから早や16年。私も今年で81歳になり駿台予備校の講師も3年前に退職しました。当時はこんなに売れるとは思っていませんでした。
Parade Books 78歳まで講師をされていたってすごいです。ご自身が予備校の授業で使うために「世界史論述練習帳new」を作ろうと思われたのですか?
著者 授業での内容を本にしようと思ったんじゃないんです。講師が喋るだけの授業では受験のための実践的な勉強は教えることができず、予備校の中で添削を始めました。お医者さんがひとりひとりの患者さんに診断書を書いて渡すようなイメージですね。それがこの本の原点なんです。予備校では添削サービスを1回2500円という価格設定にしていたのですが、それはいくらなんでも高いだろうと思って無料で始めたんです。そうしたら家に帰ると毎日たくさんのFAXが届いていて…(笑)。
Parade Books それだけ受験生にニーズがあったということですね。
著者 予備校には東大、京大、一橋を目指し添削を希望する学生がたくさんいました。そして添削サービスを行ってみて気付いたことは、質問に対して論理的な文章で回答するという教育が、世界史のみならず国語の授業においてもまったくされていないということです。大学の4年間でもそのような教育はなく、大学院で修士論文を書くときに初めて教授から指導を受けるんです。そんな状況の中で受験生向けに論述を指導する本があるわけもなく、これは絶対に出版する必要があると思いました。一種の使命感ですね。そして未だに同じような本はないんですよ。
Parade Books 熱い想いで作られた本だったんですね。
初めは大手の参考書出版社から商業出版で出されたということですが、それがなぜ自費出版に?
著者 はい、初めは商業出版でした。しかしアマゾンでの販売においてどうしても納得できないことがあって、それからその出版社との関係が悪くなって契約を終了し、自分で本を出そうと思ったんです。利益を得るためには商業出版の方がリスクもなくいいのですが、自費出版の方が自分の思い通りの本が出版できるというのもあって…。結局パレードブックスさんから出版した方がよっぽど利益が上がりましたけどね(笑)。
Parade Books 自費出版の会社は何社か比較検討をされたということですが、その中からパレードブックスをお選びいただいた理由はなんだったんですか?
著者 価格の安さと書籍販売時の利益配分の高さ、それとパレードブックスの誠実な取り組みが全社員に浸透していて、素晴らしい環境の中で、本づくりという意義のある仕事をされていると感じました。正直言って自費出版の会社はボロ儲けを狙った怪しげな存在だと思っていたところがありました。そして自費出版に限らず、それまでやり取りしていた商業出版の出版社も、著者のことよりもいかに出版社の利益を増やすかに汲汲とし、『良い本を作る、利益はその後だ!』という意志が感じられなかったんです。
Parade Books 私たちは本を販売することによる利益はすべて著者のものという考えです。手数料をいただくだけで、販売価格の50%を著者にお支払いしています。私たちは本を作らせていただくことで利益を得ます。そして本が売れて増刷になれば、私たちも利益が得られるわけです。
著者 『売れる売れないは市場に任せる』という御社のキッパリとした姿勢も、私がパレードブックスさんを選んだ理由のひとつでした。
Parade Books それは中谷さんがご自身の本に自信を持たれていたということですよね。
私たちは良い本というよりも、著者の思い通りの本をお作りする。そしてそれを私たちのサポートとデザイン力で少しでも良い本に仕上げる──というコンセプトで取り組んできました。「世界史論述練習帳new」はかなりご自身で作られていたので、あまりデザインのお手伝いができなかったのですが、ある意味、究極の著者の思い通りの本ですよね。
著者 そういう意味では思い通りの本にしていただきました。表紙の真ん中には娘が書いた絵ですもんね。そしてしっかり書店流通に乗せていただき市場に広めていただきました。
Parade Books 私たちは流通に乗せたまでです。これだけ売れたのは、この参考書が他に類を見ない唯一無二のものであったことと、毎日多くの受験生がアクセスする中谷さんのブログ「世界史教室」の存在が大きかったと思います。そのブログの中で受験生から毎年届く合格メールが紹介されていますが、それを読むと私まで嬉しくなりました。
出版後、合格メール以外にも反響はありましたか?
著者 そうですね。合格したという受験生だけでなく、大学の授業で論文を書くのに役立ったというメールもいただきますし、この本で勉強して大学教授になったという方も何人もおられて、インターネットで調べてくださって、懐かしいとメールをいただいたりするんです。
それと、YouTubeで受験用にこの本の使い方を説明している人も結構いるんですよ。
Parade Books YouTubeの人は中谷さんのお知り合いなんですか?
著者 いえいえ、全く知らない人ばかりですが、主に予備校の世界史の先生たちです。予備校の授業でも使ってくださっているのかもしれないですね。
また高校の先生が買ってくださって図書館に置いてくださる方も、私の知る限りでも結構います。ありがたいことです。
東京大学新聞からインタビューを受け、著書と共に紹介いただいたのも大変光栄なことでした。
Parade Books 本を作る目的は人それぞれですが、その中に『専門分野で1冊の本を出すことで、その分野における自分の株を上げる』というものがあります。中谷さんは決してそういった目的で本を出されたわけではありませんが、結果的には中谷さんご自身のブランディングにつながったと言えますよね。
著者 はい。この本を出したことで、私はどれだけ評判を得ることができたか計り知れないです。出版する前には想像もできなかったことで、本当にありがたい話です。予備校の中で「この本を書かれた先生がすぐそばにいる!」と感動して言ってくれる学生もいて、私自身も少し変な気持になったりすることもありました(笑)。
Parade Books 中谷さんの奥さまにもご出版いただいています。年代暗記語呂集の「日本史年代ワンフレーズ」と「世界史年代ワンフレーズ」をお作りになられました。著者が奥さまで中谷さんが監修、そして娘さんがイラストを担当、まさにご家族3人で作り上げた本ですね。これら2作も長きに渡り多くの受験生に愛され続けています。奥さまも歴史の先生だったのですか?
著者 いえいえ、妻は世界史も日本史も専門家ではなく、本を作るために一生懸命勉強していました。あの本の肝心要な年代暗記語呂はすべて彼女のアイデアなんです。今日はこれを見ていただこうと思って持ってきたんですよ。3年前に彼女が亡くなる前に、次の「世界史年代ワンフレーズ」の改訂のために、修正箇所に付箋を貼って書き込んで準備していたものなんです。彼女は本を作ることにすごく生きがいを感じていました。きっと彼女も会いたいだろうなと思って、若い頃の娘との2ショット写真も持ってきました。見てやってください。
Parade Books ありがとうございます。感動で胸が熱くなります。
この「世界史年代ワンフレーズ」も昨年第6版を完売し弊社でトップクラスのベストセラーですが、奥さまとは一度もお会いすることなく電話やメールだけのやり取りだったので、今日はお写真まで拝見できて大変嬉しいです。次の改訂のために準備されていたこんなに分厚くなった本を見ると、奥さまのこの本への想いが痛切に伝わってきます。
著者 本を作りたいという人の想いは相当なものだと思います。私のおじさんも晩年に「一万円札の福澤諭吉」という本を出しました。その時にパレードブックスさんを紹介したんですが、もう自分には時間がないからと、すでに決めていた自費出版の大手出版社から出しました。全然売れませんでしたが、すごくいい本でした。
なんというか、死の前に自分の本を残すかどうかという瀬戸際で生きている人って結構いると思うんですよね。書きたいことを書いて本を残したいと思う。そしてそこへたどり着くか着かないか、なんだと思うんです。
Parade Books すごく深い話ですね。
著者 私は「世界史論述練習帳new」にたどり着くことができました。この本を書き始めたころは自分が何者になるのか分かりませんでしたが、本を書くことで成長させていただきました。そして今では『自分はこの本を書くために生まれてきた』と確信しています。
Parade Books 最後のお言葉、感動とともに私たちも身の引き締まる思いがします。これ以上ないお言葉を頂戴したところで、インタビューを終わらせていただきます。ありがとうございました。

中谷臣(なかたに しん)
石川県能都町(現:能登町)生まれ。同志社大学・大学院・文化史学卒。駿台予備学校・世界史講師40年、京都私立高校・世界史講師15年。国立大学二次試験に課される300~600字の世界史論述問題を毎日添削した成果が「世界史論述練習帳new」となった。
ブログ「世界史教室」 
https://worldhistoryclass.hatenablog.com

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