18「庭球のサムライ
誰が佐藤次郎を殺したのか」
「イマジナリーフレンド
夏川真子短編集」佐藤瑠璃子(夏川真子)さん


ジャンル:小説 発行:2024年4月
「庭球のサムライ
誰が佐藤次郎を殺したのか」
戦前、世界ランキング三位の実力を誇った名テニスプレーヤー・佐藤次郎。彼を血族にもつ現代の大学生・三ツ矢薫は、神戸の西村旅館へ旅行中、昭和八年にタイムスリップしてしまった! それは、次郎が日本チームの主将としてヨーロッパ遠征に向かう途中、マラッカ海峡にて投身自殺を図り亡くなる日の半年前の日付だった。戸惑いながらもここに来た理由を悟った薫は、次郎の死を防ごうとするが……。
ジャンル:小説 発行:2024年7月
「イマジナリーフレンド
夏川真子短編集」
表題作「イマジナリーフレンド」のほか、さまざまな国や時代を舞台に紡がれる、最後にはっと息を飲む珠玉の短編小説を7編収録。
偉大な大叔父の物語を自分が書くなんて…と思っていましたが、親族の私にしか見えない風景を描けたと思います。
| Parade Books | 『庭球のサムライ』に描かれる佐藤次郎さんというテニスプレーヤーは、著者である佐藤さまの大叔父さまなんですよね。執筆のきっかけは、錦織圭選手のニュースだったとか……。 |
|---|---|
| 著者 | ええ。2015年、錦織圭選手が日本人初であり、アジア人初の世界ランキング4位になったと報道されたときに「戦前に世界ランキング3位のプレーヤーだった大叔父はどうなるの?」という違和感から、思わず筆を執っていました。 もともと私は小説教室に通っていたんですけど、彼のことは無名の自分が書くよりも、「誰か有名な作家さんが書いてくれたらいいな」と考えていたんです。 |
| Parade Books | 作中にもある通り、戦前の記録は現代では考慮されない場合があるんですよね。原稿は一気に書き上げたのでしょうか? |
| 著者 | いえ、全く。空白期間もありましたが、構想から執筆完了には8年くらいかかりました。書いているうちに責任感が芽生え、当時のテニス界の歴史の一コマを、本としても資料としても残す必要があるなと強く感じました。 |
| Parade Books | 8年という長い年月のなかで、特に大変だった点はなんでしょう? |
| 著者 | 全部ですね(笑)。この本は70パーセントがノンフィクションで、次郎に関しての記述はほぼ史実に基づいています。資料集めのために、国立国会図書館や秩父宮記念スポーツ図書館に通いつめたり、日本郵船の歴史博物館に問い合わせを繰り返したりしました。たとえば、作中に箱根丸という船のなかで電報を受け取るシーンがあるのですが、当時そんなことができたのか?と日本郵船に問い合わせると、回答をいただくまでに3週間かかり、当時の船のルートや詳細な資料をたくさん送っていただきました。たった一文を書くために、全てがそういう形で、1ページ書くのに何週間もかかるようなことの積み重ねでした。 |
| Parade Books | 大叔父さまの足跡を丁寧に確認しながら執筆されたのですね。SF小説でありながら、表現に信頼感やリアリティを感じるのは、地道な裏付けがあってこそだったのだと感じます。 |
| 著者 | ずっとどなたか作家さんが書いてくれることを望んでいたんですが、書き終わって、自分で書いて本当によかったなと思いました。私にしか見えない風景を描けたな、と。祖母から祖父の話を聞いていたり、次郎の姉や妹とは面識があったりしたので。とくに実家で催されたパーティーのことは、祖母やトセ子叔母さんが、当時の華やかさをとても懐かしむようによく語っていました。人物については、どんなに有名な作家さんより私の方がわかっている。あとやっぱり、次郎に対しての熱量は誰にも負けないと気づいたので。 |
| Parade Books | 熱量がないと8年も執筆に費やすことはできないですよね。締め切りなく、じっくり時間をかけてとことん制作に打ち込めるのも、自費出版ならではのメリットかと思います。数ある出版社のなかからパレードブックスにお任せいただいた理由をお伺いできますか。 |
| 著者 | 実はご先祖様のお導きだと思ってまして!10ヶ月で5社ぐらいに問い合わせをしていたんですが、どこも「出版後に書店で平積みしてもらうことは、著名な作家だって確約できるものではない」って断られたんですね。私の出版の目的は、たくさんの人に次郎について知ってもらうことだったので、書店に並べられないなら、出版する意味があるのかなと思って。こんなにいろいろ当たっても希望が叶えられそうにないってことは、ご先祖様が出さない方がいいって言ってるのかなと弱気になったこともありました。でも、もしも出した方がいいのなら、絶対にぴったりの出版社を用意してくれているはずだと思ったんです。それで、気を取り直してパソコンを開けて、最初に出てきたのがパレードさんだったんですよ。すごいでしょ。 |
| Parade Books | そんなドラマチックないきさつがあったとは! |
| 著者 | ダメ元で電話をかけたら、書店に平積みできるオプションがあるということで。はじめは信じられなくて何度か聞き直したと思うんですけど(笑)。もうここしかない!とパレードブックスさんに即決しました。 |
| Parade Books | まさに運命的にお選びいただけたんですね。『庭球のサムライ』の制作と同時進行で、筆名を夏川真子とされた『イマジナリーフレンド 夏川真子短編集』も出版いただきました。こちらはどのような意図でつくられたのでしょうか。 |
| 著者 | これは本当に自己満足のためだけの一冊なんですが、『庭球のサムライ』を読んで気になった方があわせて読んでくれたらいいな、という思いで出版しました。こちらは少部数の制作にして、アマゾンだけで流通のプランにしました。私、長編はほとんど書いたことがなくて、普段は短編ばかりなんです。 |
| Parade Books | パレードブックスでは、目的に応じたプランを用意してるんです。出版後は、次郎さんの生家がある群馬県の書店さんで大きく展開されて、上毛新聞や朝日新聞から作品について取材の申し込みがありましたね。 |
| 著者 | はい。そのときは、社会的に認められた気がして、出版の意義を感じましたね。パレードブックスさんのオプションのおかげかもしれません。これまで、わたしたち家族にとって、次郎の存在は大きくて。父をはじめ、間違った報道がされているのを見たら、メディアに電話をかけて次郎のことを伝えてきたんです。佐藤次郎の足跡を世の中にきちんと引き継いでいく義務を感じて…。『庭球のサムライ』を出版したことで、長年背負っていた宿題を終えた感覚が確かにあったんですよ。出版してしばらくたって、今はいかに読んでもらうかっていうのが課題ですね。 |
| Parade Books | 本を出版しただけではなかなか売れない時代ではありますが、きっと読者には、次郎さんの存在を感じていただける書籍になっていると思います。 |
| 著者 | これは夢なんですけど、父が在命中に次郎のことを映画化したいっていうオファーはいくつかあったんですね。ですが、当時の関係者が生きているうちは迷惑がかかるから駄目だと言って全て却下していたんですよ。でも、今だったら、父も喜んでくれるはず。どなたかこの『庭球のサムライ』を映像化してくれないかなって願っています。 |
| Parade Books | 実写はもちろん、アニメ化も良さそうですね!映像化に私も期待したいです。本日はありがとうございました。 |
